刑法255条が準用する同法244条1項は,親族間の一定の財産犯罪については,国家が刑罰権の行使を差し控え,親族間の自律にゆだねる方が望ましいという政策的な考慮に基づき,その犯人の処罰につき特例を設けたにすぎず,その犯罪の成立を否定したものではない(最高裁昭和25年(れ)第1284号同年12月12日第三小法廷判決・刑集4巻12号2543頁参照)。
~(中略)~
未成年後見人の後見の事務は公的性格を有するものであって,家庭裁判所から選任された未成年後見人が,業務上占有する未成年被後見人所有の財物を横領した場合に,上記のような趣旨で定められた刑法244条1項を準用して刑法上の処罰を免れるものと解する余地はないというべきである。
これを本件についてみると,前記のとおり,相手方は,法令により資産査定が義務付けられているところ,本件文書は,相手方(*1)が,融資先であるAについて,前記検査マニュアルに沿って,同社に対して有する債権の資産査定を行う前提となる債務者区分を行うために作成し,事後的検証に備える目的もあって保存した資料であり,このことからすると,本件文書は,前記資産査定のために必要な資料であり,監督官庁による資産査定に関する前記検査において,資産査定の正確性を裏付ける資料として必要とされているものであるから,相手方自身による利用にとどまらず,相手方以外の者による利用が予定されているものということができる。そうすると,本件文書は,専ら内部の者の利用に供する目的で作成され,外部の者に開示することが予定されていない文書であるということはできず,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらないというべきである。
以上の事実関係によれば,第1審裁判官は,判決宣告期日として指定告知された日時である平成18年8月18日午後4時30分ころ,裁判所書記官が列席し,被告人及び弁護人が出頭の上在廷する法廷で,判決の主文を朗読し,理由の要旨を告げ,上訴期間等を告知した上,被告人の退廷を許し,被告人は法廷外に出たものであるから,この時点で,判決宣告のための公判期日は終了したものというべきである。その後,同日午後5時過ぎころ,勾留場所に戻った被告人を呼び戻して検察官出席の上で再度行われた判決の宣告は,事実上の措置にすぎず,法的な効果を有しないものというほかはない。
記録に照らすと,本件では,第1審公判で取り調べられた本件装置の取扱説明書や証人の供述等の証拠により,本件装置による速度測定の正確度につきプラス誤差は生じないことが一応立証されており,被告人側から,これに疑いを入れるような特段の具体的主張,立証は全く示されていない。それにもかかわらず,原判決は,上記のとおり,取扱説明書の記載や証人の供述を根拠付ける客観的資料がないとして,プラス誤差が生じないことについての証明が十分でないと判断したものである。しかし,第1審公判における検察官の立証の程度は上記のとおりであるから,このような場合,原審裁判所において,検察官の立証がなお不十分であると考えるなら,検察官に対して,プラス誤差が生じないことを客観的に裏付ける資料を追加して証拠調べを請求するかどうかにつき釈明を求め,必要に応じその請求を促すなどして,更に審理を尽くした上で判決すべきであった。殊に本件においては,第1審公判で証人がプラス誤差が出ないことを説明資料で確認したと供述している事情があり,原判決もそのことを指摘しているのであるから,少なくともその資料について追加立証を促すことは容易に行い得たはずである。